足のむくみに関するリスク

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足のむくみと簡単に言っても色々なケースがあり、リスクがある場合があります。
医療類似行為をする方々はもちろん、民間資格の整体師もそのリスクを把握した上で施術すべきかお断りすべきかを考えなければいけません。
以下の内容は私の経験からきた私見です。

来訪者ケース

ケース1

50代男性が足の浮腫がひどくなったからとご相談にいらっしゃいました。
足といっても下半身が全体的にむくんでおり、男性を象徴するものまでむくんできたから病院に行ったら、、、まぁ、「(象徴)が〜むくんでいて〜」なんていうもんだから門前払いを喰らったそうで💦
私がみさせていただいたところ、ちょっと様子が変なんですよね。
話を聞くと、歩きながら人とおしゃべりができなくなってきたと言いますし、足全体も少し黒っぽくなっています。
夜も寝ていると息苦しくなってきて体を起こすと楽になる。
もう、これは私が手を出せるようなものではない可能性が高いので、その日は全く手を出さず、ご高診願いというお医者さんに症状の確認をしてもらうための資料を作成して、その上でお医者さんからOKが出れば施術しますよということにしてお帰りいただきました。
後日、丁寧な書類がお医者さんから届きまして、心不全の初期段階ということでそちらで治療を開始されました。

ケース2

20代の女性で足が像足のようになっていました。ふくらはぎの太さのまま、足首のくびれは全くありませんでした。
筋肉量があるわけではありませんが、よく歩くし、食事も基本自炊でバランスもよし。
すでに医師の診察は受けていて、心臓や腎臓の問題もない、そのほか健康不良と思われる部分もないとのことでした。利尿剤なども試してみたが変化がなく、ふくらはぎの筋肉の活性化やリンパトレナージュなどでも解決せず、若い女性なので、容姿的にもなんとかしたいところでした。
結局、背骨の硬さによるところが原因の可能性を当人と相談し、施術を続けていくとだんだんと足首が見えてきました。

医療行為と医療類似行為などの確認

ここで一応確認ですが、私は医師の免許は持っていませんので、医療行為はできません。医療行為とは診断を下し治療することです。鍼灸やマッサージの資格は持っているので、医療類似行為ができますが、これに関しても診断することができる資格ではありませんから、患者さんと施術内容を決めるときは「私は診断することはできませんが、このような疑いがあるのでこうゆう施術をして行きますよ、いいですか?」と相談ベースでお話を進めて行きます。人の体を触るということはリスクがあることを十分に理解すべきです。

足のむくみの原因

何が原因で足のむくみが発生するのか一通り知っておくことは大切です。

静脈うっ滞、拡張蛇行静脈
うっ血性心不全
脂肪性浮腫
肝硬変
ネフローゼ症候群
甲状腺機能低下
静脈うっ滞、静脈血栓症もしくは閉塞
薬剤
アナフェラキシー
リンパ管閉塞
タンパク喪失性腸症
栄養失調

引用『聞く技術(下)答えは患者の中にある』
ローレンス・ティアニー、マーク・ヘンダーソン(著)山内富明(監訳)

人の知識の積み上げ方にもよるでしょうが、これだと私は頭の整理をするのが難しいので次のように読み替え、さらに追記します。

  1. 静脈やリンパ管を何かによって狭められている
  2. 癌や手術による後遺症
  3. 心臓の還流が悪くなっている
  4. 肝臓の病気
  5. 腎臓の病気
  6. 血管内圧力の乱れ
  7. 薬の副作用
  8. 食事によるもの
  9. 運動不足によるもの

むくみの程度にもよるのですが、大体この順番で状態を把握して行きます。

1、静脈やリンパ管を何かによって狭められている

解剖学的なのか生理学的なのかを考えます。すごく大雑把な見方です。性別や年齢も参考にして考えます。左右の差があれば片足だけ拘束されている箇所があり、さらに太腿からずっとむくんでいるのであればリスクが高いため、医師への相談を促します。もともと肥満体質だったり、筋肉むきむきで鍛えてたりする場合、それらの細胞で圧迫していないかとか、関節の動きはどうか、痛みは一緒に出るかなどもざっとみます。
そしてここで最も大切なのが糖尿病によるむくみ。これの場合、鍼を刺すことで蜂窩織炎のリスクがあります。手技でも強い摩擦はリスクを高めます。他のむくみでも蜂窩織炎のリスクはありますが、特に糖尿病患者への蜂窩織炎は悪化しやすい。

2、癌や手術による後遺症

悪性腫瘍がリンパ節にできていたなんていうのが一番難しく、検査方法が限られている鍼灸師などには無理難題なわけですが、可能性だけは聞くことができます。最近、やたらと疲れやすくないかとか、体重の減少が著しくないかとか。手術に関しては聞けば一瞬ですが、手術が1年前で最近少し足がむくんできたとかだと手術と関係ないと当人が判断して言ってこない場合もあります。こちらから聞くべきところですね。

3、心臓の還流が悪くなっている

ケース1の状態です。息切れ、動悸、起坐呼吸(横になると息苦しくなる。上体を起こすと楽になる)は特徴的です。ここに失神とかが加わるとまず医者にかかるので東洋医学にはたどり着きませんが、起坐呼吸だとたどり着いちゃうんだなと。

4、肝臓の病気

皮膚の色に出てくることが多いかなと。お酒を飲むかどうか、最近、血液検査をしたかなど聞くとリスクを考えることができます。よっぽど限定的な血液検査でない限り、大抵肝臓の数値(GOT,GPTなど)は検査します。お酒をよく飲む人で最近お酒が二日目に残るようになった、むくみも出てきて、最近は全く血液検査をしていないといういうのであれば、一度血液検査をと促した方がいいと思います。

5、腎臓の病気

腎臓病をやったことある人は腎臓と尿の関係をよく意識していらっしゃると思いますが、腎臓とむくみの関係までは考えがいかない場合があります。
腎臓には体内の水分を調整する機能がありますから、腎臓の機能が落ちるとむくみが出ることがあります。多めに水分を取ったのに尿量が少なければ腎臓の働きが悪く体内に水分が余り、下肢に偏ったということを想像することが可能です。

6、血管内圧の乱れ

中学生か高校生か、「浸透圧」というのを理科で教わりました。体の中ではこの浸透圧をとても活用しています。
血管内の濃度が適正でない場合、浸透圧を利用して血管内の水分量を調節します。血管から浸透圧で水分が外に出るとこれがリンパ管に流れ、リンパ管に水が溢れるとむくみという症状になって現れます。
血管内の浸透圧を管理するのに係るのが大きく3つ、ホルモン、腎臓、食事です。
ホルモンに関しては、鍼灸治療院レベルでは調べようがないのですが、クッシング症候群という病気に関しては知識として入れておいていいかなと思います。ホルモン異常によるむくみで代表的な病気です。

7、薬の副作用

最近新しく飲み始めた薬などがあればその副作用の可能性があります。降圧剤による副作用はよく拝見します。とはいえ、施術の効果は期待できません。その場しのぎのスッキリ感はあるかもしれませんが、降圧剤は一生付き合う薬でもあるため、医師とよく相談して、薬を変えたり減らしたり、血圧がコントロールできているかをよく観察する必要があります。勝手に減らしたりやめたりすることを施術者が勧めることは絶対にしてはいけません。

8、食事によるもの

6の浸透圧の話の続きにもなりますが、この辺から私がやっと口を挟める範囲になってきます(爆)
塩分が多いものを食べると体内の濃度が上がり、濃度を下げるために水分を体に多くとどめさせます。ポテトチップスやステーキ、お酒を飲んだ翌日にむくみやすいというエピソードは食事によるものを連想させます。食後に緑茶やコーヒーを飲む習慣があると利尿作用で多少相殺してくれるかもしれません。眠れなくなる場合があるので、カフェインの影響を受けやすい人には注意が必要です。
放っておいても腎臓の働きにより徐々にむくみは減って行きますが、指先から体幹に向かって流して動きを出してあげた方がむくみの解消は早いと思います。
フォローとして食事の癖を自覚してもらうようにお話が進められると効果的です。

9、運動不足によるもの

ストーリーの咲ちゃんはこのパターンになります。
ヒールの靴を履くと重心移動が楽になるため、ふくらはぎの筋肉の利用が減ります。そのため、たくさん動いたとしても血流が上がりにくく、足のむくみや重だるさにつながります。
ふくらはぎの筋肉にしっかりと刺激が入るように揉んであげると血流が上がります。ふくらはぎにはアーモンドの形をした硬結を持っている人がいます。これを指先で強く刺激をするとこむらがえりを起こす人がいます。施術する際には注意が必要です。
また、もみ返しも起こしやすい場所です。繊細な筋肉ですから、指先で鋭く刺激を与えると容易に筋肉に傷をつけます。圧迫施術がお勧めです。
ふくらはぎは第二の心臓と言われています。下半身の血流を心臓に戻すためにはふくらはぎの筋肉の動きが肝要です。ふくらはぎが痩せ細ると下半身に血液が溜まりがちになり、むくみとして現れやすくなります。見た目問題を気にする女子が多いところですが、ふくらはぎに使っている筋肉があるとより健康的で、その方が魅力的に感じるのではないでしょうか。という価値観になって欲しい!枝のようなかもしか足は程々に!!

と、長々と解説しましたが、年齢や性別によるリスクの分け方などもあります。
施術者はただのむくみと考えずに、病気が潜んでいないかということを考えながら挑むべきだと思います。


コメント

  1. […] 前回の覚書では様々な足のむくみに潜むリスクを考えましたが、今回は年齢差、性別差を考慮してリスクヘッジをしていきます。また、ここでは鍼灸院や整体院に来院される患者層を意識したものになっています。 […]

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