今日は同僚とランチ。
最近、この同僚ちかちゃんは今年の頭からやたらとめんどくさい部署に異動になった。最近もとても忙しくしていて、ランチの買い物を頼まれることも多かった。ランチタイムの休憩も取れないなんて、なんて部署だ。ブラック企業だったのかーと嘆きつつ、せめて、美味しいものを食べてもらおうといろんなところのランチ弁当を買って行ってあげていた。ある日のタイカレーがすごく気に入ったそうで、このお店のタイラーメンがすごいおすすめだという話をしたところぜひ行きたいと仕事の都合がついた日に一緒に出ることになった。
うちの会社はオフィスカジュアルがかなり緩くてジーパンを履いて出勤も許されている。ちかちゃんはジーパンにTシャツ、キャップをかぶって現れた。
「随分ラフだね」「もうね、着る服考えるのもめんどくさくて。今日は辛いものを食べて発散させたい!」
ビル風吹き抜ける中、お店にたどり着くと幸いにも客入りは少なく、すぐに席に着くことができた。
食べるものはもう決めている。
「タイラーメン2つください。」「辛さはどうされますか?辛さなしから、1カラから5カラまで。おすすめは2カラです、少し辛いですね。」
前回私がいただいた時はおすすめ2カラ。結構汗が滲むぐらい辛かったけど、タイ料理のちょっとした甘味もあるのでぺろっと食べられた。
「私は2カラで。ちかちゃんは?」
「うーん、私は、5カラで。今とにかく、辛い物が食べたいの」
食べたことのないお店の最大の辛さを食べる勇気を分けていただきたい。ちかちゃんってそんなに辛い物好きだったっけと思いながら、笑顔でオーダーしていた。
「ところで、ちかちゃん、帽子取らないの?」
「あ、実はね・・・」と帽子を外す。手で乱れた髪を直しながら少し俯き加減で話し出す。
「10円玉ハゲができたの。この付近のビル風すごいから、帽子が手放せないんだよね。確か、咲ちゃんの知り合いに鍼灸師さんがいるって言ってたよね?ネットでハゲにはお灸がいいって書いてあったんだけど、本当に効くと思う?」
円形脱毛症を隠すためにキャップをかぶっていたのか。キャップなら確かに少しきつめに被れるから、強いビル風でも飛びにくい。
「10円ハゲにお灸?私は聞いたことないな。タカさんに、その鍼灸師さんに聞いてみるね」
スマホを取り出してポチポチ。この時間だと午前中最後の患者さんが終わったぐらいだろうか、午前の仕事が終わると連絡をくれるけど、今日はまだきていない。
タイラーメンがきた。
ちかちゃんの5カラのタイラーメンはすごい色をしている。地獄のようだ。
「そんなに辛いの好きだったっけ?知らなかった。」「そこまで辛いのが好きってわけじゃないんだけど、辛いの食べると汗かくじゃん?そうすると頭の熱が取れるような感じがするんだよね。でも、コーヒーと辛いので胃がそろそろやられそうだよ〜」そう言いながら、お箸でスープの中から麺をすくい上げるとふーふーと息を吹きかけて冷ましてから口に運ぶ。「カラーー」
麺をすすっているとタカさんから連絡が返ってきた。
「脱毛のある部分を囲むようにお灸をしていくみたいだよ。ちょっと痛いお灸らしい。あまり放置すると毛根も無くなっちゃうから、早めにお灸を始めて3ヶ月ぐらいはかかるって。」
「3ヶ月かー。結構かかるね。でも、ハゲてから1ヶ月、なんの変化もないから、このまま放っておくよりは施術を受けたほうがいいんだろうなー。それにしても、このラーメン、美味しいね。」
「あ、もし、辛いものを欲しているようなら、ストレスは精神的なものより環境からくるストレスの方が大きいかもだって。乾燥やハウスダストの多いところとかにいないか、過ごす場所の環境を整えることもお勧めしますだそうですよ。」
その後、ちかちゃんいわく、無事に髪が生えてきたそうです。
職場に空気清浄機をと部長に談判したり風の入れ替えなども頻繁に行ったら仕事が捗るようになったみたいで。めんどくさい部署に行ったところで、精神的なストレスには打ち勝っていたちかちゃんでした。
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